2009年11月30日月曜日

河段の家 オーディオ試聴会

 冷たい風が吹く午後、仙台の河段の家にて、オーディオに造形の深い方々5名に試聴していただきました。
 ペチカと薪ストーブに火を灯しつつ、持参いただいたCDを1曲ずつ聴くという形式で、皆さんの愛聴盤(もしくは基準となる音源)も互いに聴くという貴重な場となりました。
この土地の特性から派生して、結果的に独立していない、土間直置きかつ、ペチカが反響板で頭上に吹抜けがある、という異端ともいえる造りに戸惑われたかもしれませんが、この住宅ならではの個性ある響きを楽しんでいただいた2時間だったと思います。

(私個人としては歌曲やボーカルの高音の伸びがとても心地よく感じる空間だと思います。)
 ご参加頂き、誠にありがとうございました。
 近日中にオーディオラックを完成させ、スピーカーを2組揃えた暁には(ご希望があれば)また試聴会を開きたいですね。

 散会後、住まい手のMさんのご協力で、新しく導入した音響測定機器&ソフトの試験も行いました。1階と2階、計4地点でのピンクノイズによる周波数特性と残響時間を測ってみました。
 残響時間0.6〜0.7secの比較的長めの数字が出ましたが、吹抜けありの石張の床+レンガ壁という素材に囲まれた環境にしては予想外に良い数字がでたように思います。特性は低音がやや弱いものの、不快なエコーや特定の周波数の落ち込みを感じさせる波形ではなく高音になだらかに駆け上がるカーブを描いていました。

 今後、解析するデータを蓄積かつ技量を増し、少しでも「五感」のデザインにつなげていきたいものです。

 しかし薪ストーブ&ペチカという「静かな暖房」というのはオーディオにもピッタリと、更に実感しました。なによりも七色に揺らめく炎とペチカの温もりに背中を抱かれてたっぷり音楽を楽しむ、日増しに寒さがつのる季節には一番のご馳走だったかもしれません。

2009年11月27日金曜日

写真展 in 壽丸屋敷 2009

唐突なお知らせになりますが、拙作ながらアマチュアグループの写真展に出展しています。
タイトルは「WORKS on TODAY ~今日の現場」。
ホームページの巻頭を飾った写真、主に「河段の家」の現場写真を展示しています。
写真を見て、自由に句を詠める「フォト俳句」などの企画もあります。
お近くの方、ぜひお立ち寄り頂ければ幸いです。

「写真展in壽丸屋敷屋敷2009」
期 日 11/26(木)~11/30(月)
時 間  10:00~19:00 ※最終日は16:00まで
場 所  壽丸屋敷 (宮城県白石市中町48) 地図
主 催  蔵富人    
問い合わせ 090-2727-5319(阿部)


2009年11月13日金曜日

烏兎の森の家 お引越し

工務店の奮闘で工期を詰めて、お引越しになんとか間に合ったようです。

造付のベンチは杉の集成材を座面にしたもの。
リビングで北側を向いて座る、という住宅も意外と多くないかも知れません。


ベンチと並んで南側に設置したキッチンセット。フルオーダーで作ってもらいましたが、過剰装備の既製品に比べるとすっきりとした仕上がりです。天板のステンレスの厚さは業務用並み。でも制作費は抑えてあります。
これも早速実働開始。


あくる日尋ねると、クライアントが特注したステンドグラスが納められていました。
絵柄はかつて生活を共にした愛犬の姿を写し取ったものだそうです。

さて、まだまだ外構などが残っています。

2009年10月6日火曜日

仙台でのアートイベント


仙台市市民文化事業団主催の「アートで屋台」にてドーム設営を無事済ませ、イベントも大成功。
詳しくはアート屋台プロジェクトのブログにて。

都市建築ワークショップの鈴木さんからもアイデア利用の許可を快く頂きました。
今回は廃材を利用したけれど、次回は小山田徹氏の脚立シェルター作りや、私自身もシェルター設計に取り組んでみたいという欲が出てきました。

2009年9月28日月曜日

ペチカ試運転 初火入れ

河段の家、通称「ペチカの家」のシンボルに、とうとう火が点る日が来ました。
土間に鎮座するレンガ積みの本格ペチカには薪ストーブが接続されています。その排気熱をレンガに蓄熱することで暖房効率を上げ、排煙と燃料の薪を減らす効果が期待できる装置です。その圧倒的な存在感と重量感はこの家のシンボルに相応しい・・・。

薪ストーブはフランスのアンヴィクタ製スドン15。これも初稼働。
私が現場に到着した頃には接続されて既に火が入っていました。残念!

普通のストレスのない煙突と異なり、抵抗が大きい煙道を使うため、独特のコツが要ります。
この日は夏日の為、あっという間に2階の温度が上昇。窓を開けた風が気持ち良い。(笑)
吹抜けで上がった暖い空気は、もう一方の吹抜けである階段のシーリングファンで1階に循環させます。ペチカの裏側は寝室になっています。
(翌々日伺うと、次の日の朝までキチンとレンガに蓄熱されていたそうです。)
あとはストーブ使いの習熟と薪調達が住まい手に課されているわけですが、焦らずのんびり付きあってくださいね。

今回の試運転と説明の為に、このペチカを積んだ職人の木村さんが盛岡から来てくれました。
1年にあるかないかというペチカの製作。技術の伝承もなかな捗らないとか。高齢ゆえ作れても「あと5年だな」とも。
職人の「技の火」も消したくないものです。

5年ぶりの柿渋作り

白石の町遊び企画集団、蔵富人(くらふと)へ久々の参加です。
この5年余り地元の白石和紙に着目して、その普及の為の活動をしてきましたが、和紙の染めや補強に使う「柿渋」が底を尽きもう一度作ることになったのです。
そう白石は柿も特産なのです。本場京都でも柿を摘むところから柿渋作りに関われるなんて、そうある機会ではないでしょうね。

特にタンニンが多く含まれ柿渋に向いている「豆柿」を地元の農家のご厚意で摘ませて頂きました。
小さな木なのにドングリ大の実がびっしり成っています。


種が未成熟な青いものが適しているそうです。お彼岸前に収穫が鉄則と、和紙作りの遠藤まし子さんから教えられましたが、なんとかセーフの様です。


有り難く学生さんと一緒に、みんなで取り尽くしました。提供していただきありがとうございました。

実を選別して持ち帰り、丁寧に洗い、ジューサーに掛けて果汁を絞ります。前回貯蔵した古瓶をひっくり返すとオリで固まった柿渋が出てきました。5年ものの古柿渋を舐めてみると、すっかり角が取れたいぶし銀の渋い味。


時間切れで途中退場しましたが、腐らずにいい柿渋になることを祈って熟成を待つことにしましょう。

柿(渋)は食品加工・染色・防水・塗装・薬と最強の万能選手。日本のオリーブともいえるかもしれませんね。

2009年9月7日月曜日

烏兎の森の家 上棟式

 晴天に恵まれ、人々の笑顔に包まれた、いい上棟式でした。

 普段は式典の中心にいることはないのだが、今回クライアントさんの依頼で全体の進行役を担うことに。確かに式そのものが激減している状況では、何から始めれば検討もつかないというのも、実に当然のことです。
そこで色々調べてプログラムを作ってみると、上棟式にも本格的な神主によるものから、工事の棟梁による簡略なものまで幅広く、その選択は結局「お施主様」の気持ち次第、とこれまたやっかいな基準に基づいている・・・。

 上棟式の形式は、家の構造の多様化と、工程の産業化・複雑化に合わせて変化してきた。かつては1日で組み上げるものという習わしが、式典と建方を分ける傾向になっているのがその顕著な例です。
 しかし工事の安全と、その土地に住まいを占めうることへの「天地人への許し」を乞うものであることは変わりないはず。

 確かに工事費以外に出費を伴うのは、クライアントさんには少なくない負担を強いることです。しかし、工事期間は住まいの寿命からすれば本当に短いもので、殆どの柱や梁はすぐに壁の中に隠れてしまう。作り手とも人間的な関わりを結ぶことなく、その浅い関係で出来上った物に果たしてすぐに愛着を持てるだろうか?という素朴な疑問を常に抱いてしまうのです。
 これは地域との関係でも同じことで、知らぬ間に建って、知らぬ間に解体されることばかりが続くと、その土地に生きる人の「共通の記憶=物語」という物が薄らいでしまうのではないでしょうか?
一個人だけでは解決できないことですが、少なくとも餅拾いに参加した子供達にとって、「1つの家庭が新たに住まいを始める喜び」を包む、幸福な空気をいつまでも覚えてくれることでしょう。
 この日が家づくりの物語の1ページに加えられ、愛される家に少しでも近づけば、これほど嬉しいことはありません。

 さて、肝心の式典ですが、私のぎこちない司会でなんとか進行し、直会では「返礼の余興」として、(ご近所に少しはばかりながらも)創建築の若生社長によるギター弾き語り、私のノコギリ音楽、伝統的な謡曲「四海波」、そして最後に棟梁による「さんさ時雨」の祝い歌と、簡素ながらもバラエティー豊かなものになりました。

2009年9月1日火曜日

烏兎の森の家 上棟式のお知らせ


2009年9月6日(日)15時ごろから※餅撒きあります。
仙台市太白区仙台南ニュータウン内

減少の一途である上棟式ですが、大事な儀式であると共に、生まれ出づる新しい街の一員としての最初のお披露目の機会です。
お子さんに一度お餅拾いを体験させたい、という方にも貴重な機会かもしれません。
お気軽においで下さい。

2009年8月22日土曜日

アーコスティックハウス

先日河段の家の土間コーナーに設置された、オーディオの試聴をさせていただきました。
音源は私物のヒリヤードアンサンブル&ヤン・ガルバレクによる「オフィチウム」(ECM)というグレゴリオ聖歌のCDです。

音が空気を震わせた瞬間、思わず鳥肌が立つ。
目を閉じるとまるで録音した教会にいるかのような、まさしく音が垂直に立ち上がるかのような立体感と迫力。厳選されたアンプとオークビレッジが手がけたパイオニアのスピーカーの組み合わせの優秀さ、そこに組み合わされたこの家独特の特性。自宅で聴いているものとは全くの別物だ。これはすごい、すごい。こればかりはブログでは伝わらないだろうな・・・。

住まい手のMさんの発見ですが、2階のダイニングにいても吹抜けを通して、狂いの少ない状態で音楽が楽しめるのだそう。この現象は、オーディオセットと向き合うように設置されたペチカが反射板となって、家の中心にあって音全体を拡散させる働きをもしていることが大きい。
 音源側であるオーディオコーナーと拡張側である吹抜け空間の形状、部屋の材質の選択が専門用語でいう「デッドエンドーライブエンド」*にしていること、機器の設置ステージが強固な基礎と地盤に直結されていること、高い性能の機器、緻密な計算によるものでは無いけれど、設計〜工事については常に意識してきた、その結果だと思えば至福の時間です。

(※デッドエンドーライブエンド:視聴者を中心に、正面の壁の吸音率を高く、背面を反射率が高い素材で構成された状態のこと。)

この家の初期コンセプトを「アコースティックハウス」と名付けた経緯がある。自然素材を多用したオーガニックハウスは沢山あるが、更に人間の知覚、あるいは「響きあうもの」をこの家のデザインの中心に持ってきたかった。それはMさん夫婦の研ぎ澄まされた感性(特に聴覚と味覚)に触れての提案だったのですが、内向的な響きだけではなく、家族同士の距離、特徴的な風土、ご近所やご友人とのつながり・・・それらにも「アーコスティク的なるもの」を目指して辿り付いたものです。
その全てが完ぺき、とは言い切れませんが、これは1つの啓示として今後も設計活動に温めて行きたいと考えています。

Mさんとは住まい開きに続いて、今秋のペチカを囲む&オーディオ試聴会も計画しています。今からとても楽しみです。

2009年7月20日月曜日

河段の家・住まい開き[レポート]


 7月18日・19日の2日間、雨の中多くの方にお足運び頂き、盛況のうちに終わることができました。心より感謝申し上げます。

 さて、設計士人生初めての住まい開き(内覧会)が終わりました。
2日間ともぐずついた天気に泣かされましたが、休む間もない程の盛況ぶりで、普段お付き合いしている人の縁の有り難さが身にしみました。快くこの機会を提供していただいたクライアントさんと手伝ってくれた家族や友人に本当に感謝しています。

 実際のところ、やりたかったことの半分しか出来ませんでしたが、その中でもチェロとカリンバの生演奏ライブを自分の設計した空間で実現したことはラッキーでした。
 ふくよかなチェロは建物と響き、軒先にしたたる雨音とカリンバの繊細な音色が空間に編み込まれていくような奇跡的な至福の40分間でした。
ひとつの旅が終わった感慨にも似て、長かったその道程を振り返り、まるでぽっかり空いた夕景を見るような気持ちで余韻に浸っていました。

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 今回の「住まい開き」、そもそもこのネーミングには「住まい始め」と「住まいを開く」という二重の意味がこめられています。この絶景の土地も個人で独占せずに、それまで手入れをして頂いていたご近所さん達とも共有したい、というコンセプトは初期の設計段階からありました。その意味でも多くのご近所の方に足を運んでいただいたのはとても大事な成果ともいえるでしょう。これからの地域とコミュニティと家庭の関係を考えれば、多かれ少なかれ「繋がり・開くための仕掛け」は必然となっていくだろうと改めて確信できました。
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 やがて陽も落ちて閉場。クライアントさんが厨房のガスオーブンで初めて作ったピザを振舞われ、テーブルが団欒の笑顔に包まれました。



 談笑の和やかな笑いと賑やかな調理の音を聞くうちに、これからHouseがHomeになるかと思えば、この空間が愛されて少しでも長生きしてくれることを願わずにおれません。

[追伸]8月初旬まで個別に見学可能です。住まい開きにお時間が取れなかった方、ぜひご相談ください。 

2009年7月9日木曜日

河段の家・オープンハウス[続報]

ペチカのある河段の家オープンハウス
「住まい開き」
限定ミニコンサート開催

〜地形を活かした設計と本格ペチカによる温もり、
 秋保石や白石和紙の伝統地場材をモダンにパッケージ。
 2階リビングによって生まれた開放的な「鳥の目線」の生活と、
 外とつながる1階の自由空間。

 音響にもこだわった、
 まさしく人と地域と風土が響きあう住宅になりました。〜

日時:2009年7月18日(土)/19日(日)10:00-17:00
場所:仙台市青葉区愛子駅裏、大門寺近く[付近地図]
※場所がわかりにくく、住まい手のプライバシー保護のため事前にお申し入れください。じっくりと空間を観賞していただく為にもぜひご予約くださいますようお願いいたします。
 直前のお申し入れの方はお電話にてお問い合わせください。(090-8922-6192海子)

◎特別企画「チェロとカリンバによるミニコンサート」

秋保石を敷詰めた土間や独特な形状による音響空間と音楽の競演!
チェロの豊かな中低音とオリジナルカリンバのきらめく音時間をお楽しみください。
7月18日(土)13時〜14時頃のみ[入場無料]
JIJI(チェロ)、千田真司(カリンバ)

ご注意!
お施主様のご厚意にて特別に開放して頂いているため、一部公開できないお部屋もあります。基本的にトイレは屋外の工事用仮設トイレを使用して頂くこととなります。何卒ご協力お願いいたします。

協力:かしま工務店/大宰美装
主催:海建築事務所詳しい情報や建築の紹介はコチラ

2009年7月6日月曜日

河段の家[9]

クライアントさん立会いの元での検査日。
まだいくつか手直しと残工事がありますが、クリーニングも終わっているので明日にでも生活できそうな状態になっています。
業務用厨房機器と特注流し台で構成したキッチン廻り。でもシステムキッチンよりずっと使いやすく、コストもかなり押えられて、しかもオリジナル。

美しく磨かれたガラス越しに見る緑がさらにまぶしいです。

ペチカと土間もようやく完全に姿を現しました。


(ところどころ赤いマスキングテープがあるのは、私のチェックしたポイント)

白石和紙で別注で張ってもらった2枚の襖戸も納まっていました。やっぱり本物の和紙の質感には敵わない。

桧張りのハーフユニットバスも鳥の目線。川のせせらぎと土間のオーディオコーナーから聞こえる音響のブレンドに浸って湯に浸かる。・・・なんて贅沢な時間だろう。

そのオーディオコーナー。クライアントこだわりの場所で、スピーカーの設置や電源、音響板、壁の防振など手が込んでいます。試聴のラジカセでも十分聴けると、一人唸っているご様子です。

さて見どころ満載のオープンハウス。
実際どのように見ていただくか、未だ検討中。壁も拭取り掃除に強いとはいえ無垢の白壁、吹抜けも子供から目が離せない。でもこの無垢の素材や空間を肌で感じてもらうには・・・どうするか。

まぁあまり無理せず、自然体で「時間」だけを作ることに専念します。

2009年7月2日木曜日

河段の家・オープンハウス[お知らせ]

河段の家・オープンハウス

7月18日(土)、19日(日)予定しています。

(詳細近日発表)


場所:宮城県仙台市青葉区愛子駅近く

所在地わかりにくく、駐車場に限りあるため事前に申し込みお願いします。
詳しい所在地の地図を郵送させて頂きます。
ゆったりと空間を堪能していただく為に、また住まい手の負担を少なくする為に日時など予め調整させて頂く場合があります。
お早めにお問い合わせ頂くか、 ホームページまたはこのブログを小まめにチェックしていただければ幸いです。

お問い合わせ/電話:090-8922-6192

メール:to_sea_office@ybb.ne.jpにて
(海建築事務所・海子)



さて和室は畳が入って、ひと足早く仕上がりました。畳は藁床の「本物」。琉球表(おもて)という丈夫なイ草を使っています。

6畳間なのに広く見えるのは、カメラの広角レンズと天井の傾斜によるもの。

さて夜半まで現場でチェックの仕事をしていると、窓辺に小さなお客さんの訪問が!

蛍です。常夜灯のLEDという人工の光と呼応するかの様に命の火を明滅させて、暗い土間を照らしていました。
夏だなぁ・・・。

2009年6月30日火曜日

MJと私

 ティーンエイジの記憶を彩ったマイケル・ジャクソンが死に、ワイドショーが奇聞に彩られる今、「悲劇の帝王」というキャッチコピーばかり霧のように立ちこめて、ますますMJの人間性そのものが霞んで行くように思う。

 かく言う自分がどれだけ思い入れがあったかというと、中学生だった当時は熱心なファンどころかテープにダビングして身近に聞くことも無かった。むしろあの機械的なダンスや音楽のビートが不得意で、特に黒人であるはずなのにどんどん変形していく容姿に不気味さえ感じていて、とても共感できるものではなかった。

 しかし彼の「白肌」が私と同じ「尋常性白斑」によるものと最近知った。

 顔面を徐々に変色させていく無痛の病気へのコンプレックスは、私の思春期の人間形成に深く影響している。特に親が気にして、医者を変え、無理だと知るとカバーメイクを強く奨めた。そうして私は中学生ながら毎日化粧をして学校に通うようになった。
 その呪縛が解けたのは23才になって海外を放浪してからだ。様々な価値観の世界を通り抜けることで、世界はもっと様々な肌の色と境遇の人々に溢れていることを体感したからだ。オリジンであることをもっと誇りに思っていいと悟り、今ではどうでも良い話の類になっている。




 きっとMJは黒人であることにアイディンティティーの拠り所としつつも容姿の病変と差別の両面から隠さざるを得なかったことだろう。彼の血のにじむような努力や才能については凡人が語れば語るほど空しくなるが、複雑に屈折していたマイケル少年の気持ちは、そんな奇妙な軌跡の一致をみて、その1点のみにおいて自分と体温が伝わるような共感を初めて持つことができたのだ。

河段の家[8]

今日で6月も終わり。「河段の家」の現場もまもなく完成を迎えようとしています。
土地選びから2年。長い道のりでしたね〜(*0*);;

現場に行くと外部足場が外れていました。囲いが取れ、人間で言えば歩きはじめたところ?
袋地の突き当たりにあるこの建物、2階+ロフト付、36坪の家なんですが、ものすごく大きな豪邸に見えます。


毎回お願いしている菅井鉄工所さんの階段パーツも組み上がって、狂いもまったくない精緻な出来栄え。
かしま工務店の若い大工さん達の努力でこの複雑な形を納めてくれました。お疲れさまでした!


煙突も接続され、和室の石灰吹付仕上もとてもいい表情。(ここは後ほどレポートします。)
デッキも完成していました。壁の曲がりが不思議な遠近感を醸しだしています。
今の季節ならやっぱりビール。マイビアガーデンっていうのかな?

明日以降は器具取付けが始まる。
イメージした通りのライティングができていればいいのだけれど、毎回悩むところだけに結果が待ち遠しい・・・。
しかし、撮影した写真を見るとしっかり調整できるデジカメが欲しくなるな・・・。

2009年6月27日土曜日

河段の家[7]仕上げ工事

工事も大詰め。追い込みでどんどん現場が激変していってます。

秋保石の切断。硬そうで柔い。柔いようで硬い。

内部もどんどん仕上がり、

デッキも張られて、

外壁も塗装が済み、ようやく足場が外れます。
この日は低く傾いた西日が木陰を壁に写して、外壁の白さがスクリーンの様。
内部の白壁も屈折した壁面の連なりが面積以上の広がりを出している。
・・・来週が楽しみです。

2009年6月11日木曜日

河段の家[6]ペチカの完成

1階の土間ホールに盛岡の職人さんが手がけたペチカ(ロシア式蓄熱型薪暖房)が積み上がりました。
本物のレンガを積み上げた質量が発する、存在感がものすごい。

写真では伝わらないのが残念。
本物のレンガだけが持つ重量感。一度でも目にすればフェイクなサイディングがいかに悲しいものか伝わるでしょう。

これに薪ストーブの煙突がつながり蓄熱されます。
輻射熱を利用しての暖房ですが、その暖かさを例えれば「日向の温もり」。
2階は床暖房のような暖かさと天井扇で、家全体をくまなく撹拌してくれれば快適な冬を迎えられます。
これもモデルとなったTakaIt's Houseで実証済み。
確実に薪燃料も節約してくれることでしょう。

樹上リビングの家=「バードハウス(Dovecote House)」の魅力のひとつ。
これについては後日詳しく力説します。

2009年5月20日水曜日

被災地視察・地震が残したもの

岩手・宮城内陸地震の被災地の住宅を見学させて頂く機会があった。
そう、間もなく1年になろうとしているのだ。

設計のご依頼主のご友人から、地震で住めない状態になった古い家をどうしたらよいか、という相談の話題があがり、翌々日には急ぎ友人の営む工務店のスタッフと一緒に現地集合。こういう話はタイミングが大事なのです。

よく晴れた絶好の行楽日和。されど道は工事関係者の車両が9割。
入口ゲートでチェックを受けて進行。
地割れで寸断された道路は今なお補修中で、ダンプの巻き上げる砂塵にまみれて進めば、どこもかしこも山崩れの傷跡生々しく、覆うように新緑の木々が輝いている。

ご友人の方の先導していただき、2軒を見学。
どちらも住まい手の方は高齢で直す当てもないまま現地を離れてしまい、処分に困って相談されたとのこと。どちらも築100余年、同じ「迫大工」棟梁の技によるものだとか。

1軒は塞き止め湖の上流側にあり、大きな屋根を地面に屈ませて建っていた。
茅葺きの茅による重みと梁に比べて柱と差し鴨居のサイズがやや小さいことが影響したようだ。それでも住まい手が無傷だったことを考えると、伝統構法が持つ粘り強さの証でもあるのだ。

岩手の狸庵を手がけていた経験があるので、伊達藩内の同じ農家である造りであることもあって柱や梁の掛け方や位置は手に取るように分かる。茅を残しているので、さらに古くその原形を見ているようだった。
貫構造の破壊状況を見るだけでも、伝統の技の限界能力を学ぶ上で非常に価値がある時間だった。

もう1軒は集落のさらに奥まったところにあり、つり橋を渡るため途中から徒歩での移動となった。
こちらは古い年代の家で、更に大きな材で組まれていたためほとんど壊れているところが無い。
しかし地震の強烈な体験に加え、生活基盤の崩壊に伴う不安がその地を放棄させてしまったとのお話。
しかし実り多き山、彩られた庭園の木々、十分手のいれらた耕地が春芽吹かんばかりに息づいている風景を目にすると、長い年月かかって作りだした人の風景であることが伝わってくる。

かつて神戸の震災地に足を踏み入れたことがあるが、あの駅前を出たときの風景が目に焼き付いて忘れられない。全てが歪んでいるため船酔いのような感覚に襲われたのだ。普段無意識に水平垂直の線に慣れていたかと思い知ったと同時に、都市という人工的な環境の脆さも露呈したのかもしれない。

それに比べて、ここにはその異常な感覚を起こさせるものはない。
あるのはただ自然の雄大さと優しさがあり、その中で時間をかけて獲得した人々の営みの痕跡だった。

家は次の大雪が来るまでになんとかできないものか・・・。友人の工務店も伝手を辿って買い手を探すことになっているが、できればこの地に立ち続けることがあるべき姿。最終的には骨董としての価値としてのばら売りする手段が残るだろうが、家という創造物ではなくなってしまう。このまま移築して生活の器として再生されることを願っています。
そう、人々の思いが年月を経た詩の様に引き継いでいって欲しいものです。

そしてまたいつの日か、この地にも新しい「詩」がながれるだろうか?

ご関心がある方はぜひご一報を。

2009年5月10日日曜日

秋保石見学と現場でランチ

ここはキャンプ場?
いえいえ、実は工事現場の中なのです。

今日は海建築事務所恒例(?)の現場でランチミーティングの日。

クライアントは、料理がプロ級の腕の持ち主なので、かなり豪華な風景です。

建築する側にとっては、ケガや傷などリスクがないわけではないし、施工中は下地が丸見えなので、工事中の現場で施主がランチをとる風景は、本来はありえない光景のはず。

設計者の狙いとしては仕上がり前の最終チェックとして、「食」をはさみながら生活の実感の中で確認してもらうもの。また、一緒に家を創っているということに参加している意識も生まれます。
 結果、カウンターの高さや窓の見え方を直接確認してもらい、いくつかの設計変更を行うことに。

 しかしあまりにも今回は料理やおやつが充実しすぎていて、打合せとしてはあまり効率良くいかなかったかな・・・。


ランチ前には秋保石の石切り場を見学。盛りだくさんな一日でした。