2008年12月26日金曜日

床を補修する人


 公私共にお世話になっているTakaIt's さんの家に久しぶりにお邪魔しました。

 この日は床板の補修作業の立会い。岩手県産の杉の厚板を施主支給品で取り寄せたもので、その柔らかい感触や、香り、風合いの素晴らしい素材感でしたが、新築から1年半。乾湿を繰り返して、ところどころ抜け節が出てきてしまいました。
 販売元に問い合わせると、納品から月日が経っていましたが、すぐに対応してくれました。製材会社の方々が秋田県から専用の工具と材料を持参でやってきました。

みんなで這いつくばって抜け節探し。原因はこの家の特有の踏天井(2階の床板の裏が1階から見える)仕様が上手く発注に伝わっていなかったものによるようです。逆に補修するためには1シーズンを経てグットタイミングでした。
 然るに職人の手と道具に掛れば、ごらんの通り。

 補修の間、販売元の方と色々お話ししましたが、商品開発やこの軽やかな対応を含め、もっと宮城県の森林組合、商社、行政、作り手がもっと頑張らないといけないなぁと感じました。
 無垢材の魅力は良くも悪くもあるがままの姿であること。これを補うのは昔も今も人々の知恵と努力と誠意によるものなので、これは一体でなければならない。それが愛される建物の一部を形作っていくものでしょう。お寒い時代ゆえい一層、その「体温」の温もりがいかに尊いことか。

2008年7月4日金曜日

カフェの時間


 仙台市吉成の喫茶店「cafeエルム」が開店3周年ということで久しぶりにランチしてきました。

 お店のロゴから家具までフルオリジナルのデザインをさせていただきました。住宅の一室、10畳の部屋を改装したので、ものすごく小さな喫茶店です。制約の多い条件でしたが、入口から一杯の珈琲を頂く瞬間まで、日本の茶室・茶庭の要素を盛り込んだ設計になっています。森の中の木箱のように簡素ですが、細部に人の手の温もりを感じられるようなしつらいを心掛けたつもりです。特筆は大きな杉の一枚板をヤリカンナで加工したベンチ。いい仕事をさせて頂きました。

 そのベンチに腰掛けて、フォカッチャと野菜グリルのランチ。雨に濡れた庭の青葉を見ながら、同じく来店を心待ちにしていたお客さんとのおしゃべりと、こだわりの珈琲を存分に満喫しました。

 色々なワークショップや教室、勉強会、北欧バザーも時折開催していて、最近は予約客限定の営業とのことでしたが、この三日間だけ久しぶりにフルオープン営業。

 今後は営業日を増やしていく方針とのこと。楽しみ。

2008年6月10日火曜日

この世界に生まれし子に祝福を

明け方5:00。妻の「始まったかも。」の声に目覚める。

夜遅くに寝たせいかなかなか頭がはっきりしない。聞けば今までに感じなかった痛みだという。予定日は明後日。今来てもまったく不思議じゃない。病院に電話し指示を受ける。
外をみると見事に晴れ渡った青空が広がっている。日が昇った世界はまだ新しい。暦をみると6月10日大安吉日。

7:00。病院が始まるまでの間に僕が朝食の準備をすることに。しかし動揺して手に付かず、冷蔵庫にあった手羽先をわざわざ七輪の炭火で焼く。良い匂いが漂うベランダで、取り乱す自分が愛おしいと思う。それを陣痛の合間に妻が美味しいねぇ、と食べた。

8:20。いよいよ陣痛の痛みもまして、病院に出発。自宅は4階なのでかなりの苦痛。車に乗せて、通勤ラッシュが終わった道を病院まで急いだ。

8:50。病院に到着。車イスで産科外来に急行。担当医の診察で即入院決定。行先は分娩室。もう子宮口が半分以上開いているという。僕は一端入院の荷物を取りに車に戻る。予感もなく始まった事態に頭がついていかない。

9:00。いよいよ分娩体制に。4ヶ月通い慣れた病院の廊下の末端に、ようやくたどり着いた。妻の陣痛は次第に短くなっていく。立ちあいの確認を助産士さんから聞かれ「立ちあう」と即答。前日まで迷っていたのだが、この一生あるかないかの機会を精いっぱい感受しようと思う。廊下で昼の間に生まれると聞いて驚く。遠くの森の緑が鮮やかに輝いて廊下を緑色に染めている。

12:30。子宮口は全開になり、妻は専用の服に着替え、テキパキと助産士さん達が出産体制に変えていく。僕だけ普段着でただひたすら手を握る。医師の説明ではあと30分位、と聞いて更に驚く。妻はお手本通り見事な呼吸法を続けている。出会った頃、子供なんて絶対生まないなんて言っていた彼女がもてる力を振り絞っている。その姿を見て、目が潤み視界がぼやけてくる。
13:26。ついにその時がやってきた。もう頭が見えている。地引き網の如く担当医の大きな掛け声で渾身の力を込めたその瞬間、ドワーッと子供がすべり出てきた。女の子だ!「うみゃー!」という元気な泣き声が、張りつめた空気をすべて溶かしてしまった。髪の毛が多い!顔が妻に似ている!妻の胸の上で、初めて放り出された世界にびっくりしているようだ。僕は涙を流すことはなかった。ただただ無事に子供と顔を合わせることができた幸運に感謝で胸がいっぱいだった。
妻に今の心境は?と尋ねと「ビールが飲みたい!」との返事。部屋が笑い声で包まれた。

夜。一通り済んで、ひとりで帰路につく。ふいに閉店間際の売店に立ち戻り、今日の朝刊を求める。店員さんが引っ張り出してきてくれた。記念にしようとしたその一面には東京の通り魔の事件が大きく載っていた。決して安穏ではないこの世界に彼女はこれから生きていく。心豊かに素晴らしい出会いでその人生が彩られるよう、空高く凛と光る上弦の月に祈った。

2008年5月14日水曜日

かつて歩いた道


 「四川大地震」の震源地のエリアは、15年前にチベットまでの道程で通ったことがある地域です。成都→松藩→夏河と崖やパンクや土砂崩れと厳しい道のりでしたが、中流域から2000mの草原地帯へと劇的に変化する風景に目を奪われた旅でもありました。
 15年前といえば変革激しい中国においては大昔。特に成都など大都市の変わりように自分の記憶を重ねることは不可能です。
 しかし古いフィルムを引っ張り出して見てみれば、遠い町角からにこやかに話しかけてくる現地の人々の笑顔や土の匂いが呼び覚まされます。

 この古ぼけたフィルムが、願わくば隣人としての想像力を喚起する一助となりますように。


[写真上]松藩市内のマーケット風景。連なった長屋が等しく傾いている。地震によるものか、欠陥によるものかは不明。
[写真下]長距離バス移動の途中、道路が川に流されていて徒歩で崖下を渡った。人物は現地の旅人。

2008年4月29日火曜日

映画とソロツーリング

 春の陽気に誘われて、久しぶりにヤマハSRX-4で出かけました。

 室内でアイディアをひねり出すような日々が続いていて、気がつけば季節はすっかり初夏の風情。木々の若葉のライムグリーンや、山吹のクロムイエローが目にまぶしく、山々を縫って走れば、湿った土や植物の仄かな香りが鼻をくすぐります。バイクならではの恩恵です。

 目的地は丸森町筆甫(ひっぽ)で行われる上映会。知人より案内を頂いていた日本人の監督によるチベット関連のドキュメンタリー「モゥモ・チェンガ」という作品です。しかし快調に飛ばしすぎて思わず道を間違い、結局ギリギリセーフ。会場である旧中学校体育館は既に満員。最近のニュースも手伝って相当な関心の高さが伺えました。

 1時間40分の映画を見終えたところで、余韻が冷め止まぬまま会場を後にしました。後援会やもう一つ上映があったのですが、今回は涙を飲んで再びバイクで走り出しました。今回もう一つの目的は、家族が企画するポスター撮影のロケハンも兼ねていたのです。明るいうちに移動せねばなりません。
 そのまま県境の「松阪峠」を越え福島県梁川町に。峠は霊山が近いので、景色も絶景。対向車も無く快調に山を駆け降りて、遅い昼食は「伊達鶏」のからあげです。揚げたてはジューシーでとっても柔らか。値段も安くて満足です。
 帰りは阿武隈川沿いの渓谷を下って走りました。夕日を背中に浴びて、深い谷が創る陰影のコントラストの美しさ、対照的に悠々と流れる川の沈黙。その雄大さが日々細々と積もる生活のストレスを浄化してくれました。

 これから出産・育児を控えていて難しいですが、次回はもっと時間をとって出かけたいなぁ・・・。

2008年4月27日日曜日

笑う家


 今日の午後、設計させて頂いた住宅に見学希望のご夫婦を案内しました。

 実際建てたり住んだりしてみての色々貴重な体験談や、家作りにまつわる率直な感想や育児などの話題で盛り上がりました。僕に依頼される方はなぜか人が集まるような家を好まれる(あるいは好きになってしまう)方が多いような気がします。色々な理由や事情にもよるのですが、人が通うことで、おもてなしの心遣いから彩りと快いハリが生活に生まれます。結果として健全で居心地の良い場所が生まれ、建物も長く愛される。
 これは建築士としても理想でもあり、無情の喜びでもあるのです。これを言葉に上手くまとめたいと以前から思うのですが、適した言葉がなかなか見つかりません。
 ところが今日の帰り道にふっとフロントガラスの向こうに思い浮かんだのが、
「家が笑う」
という言葉でした。

 何やら大事なエッセンスが含まれていそうなので、しばし熟考の上アップしたいと思います。

2008年4月25日金曜日

古きモノとの別れ

 この一週間に色々なものとの別れがありました。大切な友人や、愛用のデジカメや、携帯などが次々と・・・。

 その中のひとつはヤマハのセローという、20歳の時に初めて買ったバイクでした。

以来どこに行くにも一緒で、山から海から、夏の京都から雪の飛騨高山まで。帰省の度に片道600キロ以上なんて当たり前に酷使しても故障ひとつしない素晴らしいバイクでした。メカを学び、悲喜こもごもの二十代を共に過ごしてきた相棒でした・・・。コイツでユーラシア大陸横断を、と腕のいい鉄工所に頼んで大改造。結局使わずじまいでしたがいつかは、いつかは、と引越しの度に一緒に運んでいました。
 それがつい先日仲間の宴席で「譲ってくれ!」と頼まれ、戸惑いはありつつもバイクは乗ってこそ活きるものと承諾しました。搬送の当日、やはり淋しい気持ちがあふれてきます。まるで長年連れ添った愛馬が異人に売り飛ばされるような気持ちで見送りました。
 その後すぐに色々な人々の手でエンジンが掛るまでになったそうです。一生懸命整備しているとの話を聞いて、あのまま手元にあったら飼い殺し、これで良かったのだと思います。

 きっと僕にとっては、次なるステージの幕上げ、新しい出会いが近づいている兆しなんでしょう。と、愛車にチャイルドシートを取付け終わって見上げた空から、春風に乗ってすぅーっと実感が舞い降りてきました。

2008年4月24日木曜日

造形的な地形


 1/100スケールで建築模型を製作中。
普段は平べったい板1枚で終わるところですが、この土地の地形にはかなりてこずっています。測量データをパソコンで一度3D化してから、その仮想空間の地形から等高線を割り出して1枚1枚高さごとにスチロールを切り抜きました。
ここまででおよそ1日です。
 参考に同スケールのミニカーを乗せて撮影。

2008年4月13日日曜日

ガムテープ書道


 JR駅構内の案内表示で注目される佐藤修悦氏の文字「修悦体」に感銘を受け、氏へのオマージュをこめて週末のイベント用の看板を製作しました。

 あまり詳しく研究せずに真似てみたのですが、後にYouTubeで製作風景を見ると作り方が全く違う。氏の方法は文字の構成をまるで柱や梁を架け渡すように構築してから、不要なところをカッターで削る取るもの。スピード感があり、実に建築的な手法であることがわかります。
 僕の場合は左手にガムテープ、右手にカッターで切れ目を入れながら曲げていく方法です。字画のひとつひとつがまるでゴムの塊になったような感覚が非常に面白く、「書道」として十分成り立ちます。

 実際やってみると、素材と技術に制約があることが独特の生命感を生み、説得力を持っていることがわかります。本来、独自性や個性というのはそういうものから派生するものです。

 ちなみに僕の文字のフォントは高速道路の表示に使われているものを引用しました。

2008年4月10日木曜日

自家焙煎の時間


 コーヒー豆が尽きてしまい、急きょガスコンロで100g焙煎しました。
今回の豆は初めて試すドメーヌというアフリカ・ルワンダの産。ルワンダといえば未だ悲しい事件の記憶が生々しい土地の印象です。紅茶の産地もそうですが、この手の嗜好品の産地というのは貧富の差が激しく、政情不安定な土地が多いような気がします。
 いつもは20分位の焙煎時間でしたが、15分程の中煎りに。飲んでみると、上品な酸味の味と爽やかな中に幽かに乾いた土の香りがしました。

 この破壊的に忙しいさ中で、少し現実逃避気味な行いかもしれませんが、凝り固まった頭を解きほぐす僕の大事な儀式の一つになっています。

2008年4月4日金曜日

原寸大のシュミレーション


 少し前になりますが、現在計画中の敷地で「原寸シュミレーション」を行いました。僕の事務所では初めての取り組みでしたので試行錯誤を依頼主にご理解していただいたうえで、更には一緒に仮設足場を組み立てるという実験的な作業にも快くご協力いただきました。
 基本計画での建物は2階がリビングとなる予定ですが、敷地は広瀬川の切り立った高い崖に面していて、眺望は良いことは分かっても、実際の景観や川との距離感が掴めません。大体そういう場合はカメラを長い棒の先に取り付けて、凡の高さを設定して撮影して確認していますが、依頼主の「五感を大切にする」というご性格も考慮して、やってみましょうか!となったわけです。

 当日風はまだとても冷たい日でしたが、非常に良い天気に恵まれました。足場設置の手伝いは予想以上に重労働でしたが、お昼には何とか完成。シェフ並の腕を持つ依頼主の料理も出てまるでピクニック気分で楽しい一時でした。
 さて足場に上っての効果はどうだったかというと、予想もつかない
別世界が広がっていました。足場は2階リビングの角を想定して設置しましたが、季節や時間で表情を変える川面や、木々の梢の近さ、そして家々の向こうに眺望が利くことが分かりました。

建築家がいくら模型や3Dから創造力を駆使しても、本物の風景や風の強弱、木々の表情までは読み取れません。その後、尊敬する建築家の吉村順三氏の対談集を読んで、氏も敷地を観察する為に専用のヤグラを持っていて構想を練っていたことを知りました。土地に合ったスケール感を生み出す為にはとても有効な手法だと確信しています。

 近所の方々も突然足場が組み上げられて驚いていた様子でした。「もう工事が始まるの?」と聞かれましたが、確かにある意味でこの土地に住むんだ、という意識を高めるためにも上棟式に似た高揚感は生まれたかもしれません。
 せっかく建てた足場ですが、事故が発生しないように夕方には解体してしまいました。今後はもっと手軽に3mの高さに上れるような足場が欲しいですね。設計して作ってしまおうかな。

2008年3月26日水曜日

スタードーム再び

週末、再びスタードームを製作しました。
 今度は竹林から実際に材料を切出し、加工して、組み立てという一連の作業に初めて取り組む作業でした。前回までのスタードームは「NPO法人笹舟」からの借り物でしたので、ようやく自分達(屋台プロジェクト)のマイドームが手に入るわけです。



 作業日は実に春らしい陽気に包まれた天気に恵まれました。集まったのは総勢12名。切り出す場所はメンバー自宅近くの鎮守の森からです。この森は竹に荒されているものの、入口の坂の下のアプローチからみる小さな参道の景色が実に美しい。鉈や鋸で竹を打つ音がとても心地よい場所でした。しかし竹を伐採となればその気分は消し飛んで、現場に走る緊張感。直径15cmとなると倒すにも多少の危険も伴います。声を掛け合い、協力しながらの作業です。
 また笹舟の会の方から竹きりの極意も学びました。「伐るときは節の上で」が原則とのこと。こうすれば節のところに水が溜まらず、ボーフラ即ち蚊が少なくなるそうです。



 さて、切り出したら場所をえずこホールの駐車場に変え、とっておきのランチを準備。メニューは森の帰り道でとった山菜の天ぷらです。フキノトウ、ノカンゾウ、タンポポ、ヨモギの若葉などが実に香ばしい春を口の中で咲かせます。器や箸も竹から作りだしました。あぁ幸せだな〜。



 こうして見ると、「材料〜加工〜組立〜使用」という流れを一日で体験できるというのは、建築の仕事をしていても非常に希有なことなのです。最近の偽装問題特有の「所在の不確かさ」というのが一辺の曇りもなく明らかなこの取り組みは、ものづくりに関わる全ての人々にとっても良いリハビリになるように思えました。

2008年3月21日金曜日

楮(こうぞ)の刈り取り

 日頃から参加している白石のグループ・蔵富人の楮(こうぞ)畑を手伝いました。

 楮とは和紙の代表的な原料となる植物です。白石和紙は今では珍しく地元の材料を使う製法にこだわり、白石の風土から生まれた紙は白く強靱で、長く東大寺の御水取りの僧が着る紙布として使われている程の品質を誇ります。しかし今ではたった1軒の工房がその技術を支えているのが現状です。
 8年前から「何らかの形で協力できないだろうか」と動き出したプロジェクト。あかりワークショップを開いて紙に触れるところから始まり、和紙作りを知るに連れ、原料確保の厳しい実情を知り、ついには原料づくりを始めるに至った次第です。
 和紙工房の遠藤まし子さんから親となる楮の株を分けていただいて、はや5年。土地の開墾の辛さも記憶に鮮やかですが、ようやく次なるステップである「黒皮づくり」に辿り着きました。

 今回は勉強が目的なので、刈り取りのシーズンからはややずれています。あいにくの雨空でしたが、6株から枝を収穫。一年でこれだけ伸びます。それを90センチの長さに切りそろえ、メンバーお手製の蒸かし器に詰め込みます。そして待つこと2時間。芯と皮が剥がれてきたら、皮剥ぎ作業の開始です。


 これが実に痛快な位に簡単に剥ける!温かい間はまるでソックスを脱ぐようにスルスル剥がれてきます。しかし調子に乗って細かくちぎれてしまったりする辺りがシロートです。辺りには蒸かしたてのサツマイモのような甘い香りが漂い、思わず剥いだ芯をなめてみると甘い!この正体は紙漉きには邪魔者のセルロースの甘さなんだそうです。


 あっけなく作業が終わり、並べられた黒皮の束を早速和紙工房へ。品質は劣るものは蔵富人特製「かすがみ」になります。僕がものづくりの師と仰ぐ遠藤まし子さんからも労いの言葉を頂きながらも、100あるという紙造りの工程のほんの序段から、ますますその奥深さを知る思いがしました。


 プロから見ればお遊びですが、聞くとやるでは大違い。あの芯の甘い味を忘れることはないでしょう。イキモノがモノになる大事な過程を、まさしく味わえた貴重な体験でした。

2008年3月14日金曜日

病院で容れ立ての珈琲を飲むには・・・

僕には入院中で身重のツマがいますが、毎日のように飲んでいた珈琲が飲めません。

点滴チューブにつながれているので喫茶店で容れ立てのコーヒーを飲めるような状況になく、かといって自宅で使っている道具を持ち込む訳にも行かない。
ちょうどそこにキャンプなどの野外イベントや、あるいは普段使いできる様にと取り寄せたドリッパーが到着。それがこの「カリタ ニューカントリー102」です。


これは単純な作りですが、上の器にお湯を注ぐと小さな穴からコーヒー豆に蒸らすように降り注ぎ、手軽にドリップ式珈琲が容れられる優れ物。僕が設計事務所に弟子入りしたときに同形のポットがあり、朝の掃除が終わると打合せ前に必ずこれを使って始まりの一杯を容れるのが僕の日課でした・・・。

「おおっ、これならお湯さえあれば病院でも飲めるぞ」と早速面会に持参しました。
これを見せた時の彼女の目の輝きようといったら、まるで砂漠の中のオアシスを見つけたがごときです。お湯が談話室のポットから、粉はおまけのブレンド豆でしたが、念願の容れ立てを二人で飲むことができました。
(もちろん彼女は量を控えめに)

ホワイトデーを彩るには素敵な助っ人でした。

2008年3月11日火曜日

芹と出会う旅

先週末、ナトリの農家である三浦タカヒロ氏主催の「なとり農と自然の学校」に参加してきました。今まで同じ街に住んでいながら味わったことのない土との触れ合いと、芹畑の水面から風土の素顔を見た気がしました。それは心安がる穏やかな風景でした。
されど、機械化できないこの作業。厳冬時の収穫や出荷の作業の大変さは想像を超えます。スーパーの何気なく見ていた芹も貴重に思えてきます。
そしてお待ちかね、摘み立てを鴨肉の鍋で味わう「芹しゃぶ」の香り高い味は絶品でした。鳴子の限定日本酒も出て、うさぎが遊ぶ縁側の日なたに座れば、ぽかぽか温かい日差し。
とても幸せな日でした。

スタードーム組み立てに挑戦

今日は「スタードーム」を仲間と組み立ててみました。
もともとは美術家・藤浩志さんの講座で知ったのですが、簡単な構造と身近な素材である竹で作るシェルターに惹かれ、作る機会をうかがっていました。今年は顔を出している色んな団体で街に仕掛ける企画が浮上していたので尚のこと。
ところがひょんなことで知人にスタードーム経験者がいて組立を体験できるチャンスが転がり込んできたのです。
お借りした材料の劣化などに手間取って組立に2時間半。組み立てる法則を憶えさえすればいいのですが、意外にムズカシイ・・・。

しかし「せーの!」でドーム状に立ち上がる瞬間は興奮!どうしてモノが立ち上がる瞬間とはこうも感動するのでしょう。

今回は試作なので、今日中に分解しなくてはなりません。でも思わず入りたくなる魅力がいっぱい。あぁ、ここで酒が飲みたい、寝ころびたい、住みたいと皆が笑顔。いいねぇ・・・。

そして分解。かかった時間はたったの15分でした。

2008年2月18日月曜日

土間で味噌作り

 かねてより企画していた「味噌作りの会+薫製付き」が週末TakaIt'sさんご夫婦の家で開かれました。

 口コミ、MLで呼びかけてみたところ参加者は子供を含めて15名!
広大なフリースペース&土間を持つ家じゃなければとても入りきれません。
味噌にして合計6kg分を製造。
結局塩と大豆は各自手配して、煮るなどの下準備をして持参となりました。

 私は主に薫製づくりを担当。
自作のD-smorkerでチキン手羽元とくじら肉ベーコンを薫蒸。
TakaIt'sHouseで塗装を担当した太宰氏と共に、暴風警報も物ともせずにのろしを上げ続け、見事な薫製が完成。
試食の旨さに我慢できず、ビール&日本酒に屈してしまいました。
天気も午後には穏やかになり、満腹、満足の終始笑顔が絶えませんでした。
素敵な会話、美味しい食物、心地よい労働。
これ以上に何が必要でしょうか?

今日仕込んだお味噌は各自持ち帰り発酵させます。
食べられるのは秋ごろかな。
その頃に持ち寄りの味噌尽しの食事会を開いてみたいな。
どれだけ味に違いがでるのか、今から楽しみです。

会場を提供してくれたTakaIt'sご夫妻に感謝します。
今の時代、新しい「人々とつながるための土間」という名の住宅の中の公園。
その魅力を十分に発揮した一日でもありました。