仙台の喫茶店「アンビエン」で開催された
「小さな街」企画のトーク&レクチャーを無事終えることができました。台風が迫り雨が降る中ですが定員満席となりました。お越しいただきありがとうございました。
予定時間を大幅に超えた、非常に濃密な3時間半でした。
今回のイベントは「小さな街」という、多彩な切り口で街に仕掛けてる小野さんからの提案で実現したものでした。私という個人の仕事や活動をアンビエンの数時間様々な人々と共有して、つながりや経緯をたどる事で個人が連なる社会の姿を明らかにして行く試みでした。
実際お集まり頂いた参加者の顔ぶれは本当に多様で、全く初対面の方から、旧知の職人さん、お施主さん、同業の方からNPOにお勤めの方など。まさに私にとっては360°から見つめられ、全てをさらけ出す様な場であり、まな板に乗った気分で過ごした時間でした。
しかしコーディネーターの小野さんからのQ&A方式で和やかにレクチャーは進行、参加者の皆さんから多くの興味深い質問や指摘を受けることができました。
私なりに建築の世界を手探りで歩いてきた10年間でしたが、こうして一般の方向けにお話してみると自分の軌跡が一貫して今に連なっていることに気付かされます。
ブログですら、私を語るというのはどこか面映いことですが、問われて初めて自分の言葉から発見したのは、私の生き方の姿勢、創作に臨むある種の習性でした。
それはまるで問い続けることで朧気な正解の輪郭を掘り進めていく行いに等しく、その中で確かな手応えを感じたものだけを頼りに創作や、社会活動を続けてきたように思います。
「人はなぜ建てようとするのか?」
「住まいとは何か?」
「ここで何が可能か?」
こんな前提とも言える素朴な疑問を自己に、または依頼者の方々に問い掛け、共に考えることで見えて来る障害や、問題、疑問、あるいは些細な「引っかかり」は、実は個々のアイデンティティの投影なのです。それを反転できれば、その土地、その人固有の魅力的なデザインにたどり着く。
形にすぐ現れるものでもない作業なので、見えて来るまでには確かに時間と根気が要ります。
レクチャーで聴いていた参加者のある方はその行いを「情熱的だ」といい、またある人は「根源的だ」ともいい、そしてまた「つなげる人」、はたまた「縄文的だ」とも。
僕がこのテーマで感じたことは、
やはり海子さんは「コミュニケーショ ン」の人であるという事。
では、海子さんのコミュニケーションの「特徴」とはなんだろう?
[中略]
(何に対しても)疑問を持つ事。そして(持った疑問を自身や相手に)
問い続ける事。もうひとつは、(海子さん)自身の「経験」を相手と
共有する事で導いているという事。
相手(お客様や業者さん)の事を時間をかけて知り、
そこで見えてくる疑問(問題)を導くように自身の大きな経験で包み込んでいるのかな
と感じました。
この部分が相手に伝わり、海子さんへの「信頼」や「興味」に繋がるのだなと。
そこが海子さんのコミュニケーションの「特徴的」な部分なのではないのでしょうか。
【小さな街・anbienで過ごす1年ブログより】
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温かなスープを食べながら…。 |
依頼者にとっての家づくりを旅に例えるならば、大手ハウスメーカーはパック旅行。それに対して私の仕事は冒険心あふれる一人旅のガイド。依頼者と共に、あるいは先行して目的地まで導く。図面はその為のプランや地図ともいえるでしょう。
そう思えば、これまでの数々の出会いが今の私の個性を形作っているのです。
これからどんな出会いや旅が待っているのか…。このレクチャーで見えてきた10年の蓄積を土台に更に積み重ね、今後も変化も吸収しながら進化していければ、と願っています。
それにしてもこうしたお話会の企画そのものも実に興味深かった!今回は自分自身がゲストでしたが、きっと文章や写真だけではない建築家の生の声や表情やためらいも含め、話を聞き、言葉を交わす場を一般の人は求めていると実感しました。
様々な人々からの声や発想で織りなす創造的な場。関心や価値観が交わりにくい現代社会ではとても意味があるのではないでしょうか。
無論、反省点もなかったわけではありません。
自分自身のコメントの帰結として「つなぐ」というワードを多用しすぎて、もっと肝心な「どうつなぐか」「どんな形でつなぐか」を端的に提示できなかったこと。また裏テーマとしていた「所有/共有=ひらく/とじる」の話題を触れるに留まったことなど。
でもこれは改めて他の建築家や、あるいは多種多様なクリエータを交えたお話会の企画を、楽しい形で提供したいと考えています。
[参考資料]
時間配分が分からず紹介しきれなかった画像と書籍です。
アマゾンのボタンが煩わしいですが、詳細情報が掴めますのでそのままリンクしています。
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