2009年8月22日土曜日

アーコスティックハウス

先日河段の家の土間コーナーに設置された、オーディオの試聴をさせていただきました。
音源は私物のヒリヤードアンサンブル&ヤン・ガルバレクによる「オフィチウム」(ECM)というグレゴリオ聖歌のCDです。

音が空気を震わせた瞬間、思わず鳥肌が立つ。
目を閉じるとまるで録音した教会にいるかのような、まさしく音が垂直に立ち上がるかのような立体感と迫力。厳選されたアンプとオークビレッジが手がけたパイオニアのスピーカーの組み合わせの優秀さ、そこに組み合わされたこの家独特の特性。自宅で聴いているものとは全くの別物だ。これはすごい、すごい。こればかりはブログでは伝わらないだろうな・・・。

住まい手のMさんの発見ですが、2階のダイニングにいても吹抜けを通して、狂いの少ない状態で音楽が楽しめるのだそう。この現象は、オーディオセットと向き合うように設置されたペチカが反射板となって、家の中心にあって音全体を拡散させる働きをもしていることが大きい。
 音源側であるオーディオコーナーと拡張側である吹抜け空間の形状、部屋の材質の選択が専門用語でいう「デッドエンドーライブエンド」*にしていること、機器の設置ステージが強固な基礎と地盤に直結されていること、高い性能の機器、緻密な計算によるものでは無いけれど、設計〜工事については常に意識してきた、その結果だと思えば至福の時間です。

(※デッドエンドーライブエンド:視聴者を中心に、正面の壁の吸音率を高く、背面を反射率が高い素材で構成された状態のこと。)

この家の初期コンセプトを「アコースティックハウス」と名付けた経緯がある。自然素材を多用したオーガニックハウスは沢山あるが、更に人間の知覚、あるいは「響きあうもの」をこの家のデザインの中心に持ってきたかった。それはMさん夫婦の研ぎ澄まされた感性(特に聴覚と味覚)に触れての提案だったのですが、内向的な響きだけではなく、家族同士の距離、特徴的な風土、ご近所やご友人とのつながり・・・それらにも「アーコスティク的なるもの」を目指して辿り付いたものです。
その全てが完ぺき、とは言い切れませんが、これは1つの啓示として今後も設計活動に温めて行きたいと考えています。

Mさんとは住まい開きに続いて、今秋のペチカを囲む&オーディオ試聴会も計画しています。今からとても楽しみです。