2009年9月7日月曜日

烏兎の森の家 上棟式

 晴天に恵まれ、人々の笑顔に包まれた、いい上棟式でした。

 普段は式典の中心にいることはないのだが、今回クライアントさんの依頼で全体の進行役を担うことに。確かに式そのものが激減している状況では、何から始めれば検討もつかないというのも、実に当然のことです。
そこで色々調べてプログラムを作ってみると、上棟式にも本格的な神主によるものから、工事の棟梁による簡略なものまで幅広く、その選択は結局「お施主様」の気持ち次第、とこれまたやっかいな基準に基づいている・・・。

 上棟式の形式は、家の構造の多様化と、工程の産業化・複雑化に合わせて変化してきた。かつては1日で組み上げるものという習わしが、式典と建方を分ける傾向になっているのがその顕著な例です。
 しかし工事の安全と、その土地に住まいを占めうることへの「天地人への許し」を乞うものであることは変わりないはず。

 確かに工事費以外に出費を伴うのは、クライアントさんには少なくない負担を強いることです。しかし、工事期間は住まいの寿命からすれば本当に短いもので、殆どの柱や梁はすぐに壁の中に隠れてしまう。作り手とも人間的な関わりを結ぶことなく、その浅い関係で出来上った物に果たしてすぐに愛着を持てるだろうか?という素朴な疑問を常に抱いてしまうのです。
 これは地域との関係でも同じことで、知らぬ間に建って、知らぬ間に解体されることばかりが続くと、その土地に生きる人の「共通の記憶=物語」という物が薄らいでしまうのではないでしょうか?
一個人だけでは解決できないことですが、少なくとも餅拾いに参加した子供達にとって、「1つの家庭が新たに住まいを始める喜び」を包む、幸福な空気をいつまでも覚えてくれることでしょう。
 この日が家づくりの物語の1ページに加えられ、愛される家に少しでも近づけば、これほど嬉しいことはありません。

 さて、肝心の式典ですが、私のぎこちない司会でなんとか進行し、直会では「返礼の余興」として、(ご近所に少しはばかりながらも)創建築の若生社長によるギター弾き語り、私のノコギリ音楽、伝統的な謡曲「四海波」、そして最後に棟梁による「さんさ時雨」の祝い歌と、簡素ながらもバラエティー豊かなものになりました。

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