2004年7月19日月曜日

川猫マス尾のエッセイ 第3回


[地域情報マガジンWindsの宮城県名取市担当時代のエッセイを転載]

 我が輩はカワネコである。名はマス尾。

 宮城県ナトリ市の増田川に住んでゐる。

 この川は、よく見れば色んな生き物を見ることができるが、それ以上にゴミがよく目立つ。老若男女平等にゴミを投下しているようだ。ゴミも観察すると面白い。助平な本がある場所、タバコの吸い殻が集まる場所など、そのポイントはだいたい決まっていて、そこから人間の行動が読みとれる。しかし時にはガマンならん時もあるのだ。
 ある夏の晩、川で花火を見上げていると、走り去るバイクの音と共に、突然橋の上から大量のビニール袋が降ってきたことがある。野球選手の写真が入った新聞勧誘のビラである。無論、ネコや魚が新聞を取るはずがない。祭りに心はやるバイトの兄ちゃんが、仕事を早く切り上げようと棄てたに違いない。

 華やいだ気分を汚され、我が輩は怒り心頭でその新聞販売店に(神通力で)電話を入れた。

「おたくのバイトが、川にビラを投げ捨てているぞッ!早く回収しろ!」

しかし店主は素直に信じようとしない。

「じゃ、ケーサツに通報しますか?」

と提案すると、ようやく誠意を見せてくれた。

 果たして本当に暗闇の中拾ったのか、それとも流されてしまったのか、一面にあったビラが朝には消えていた。

 大雨の増水時、実に色んなゴミが上流から下流へと流れていく。まるで回転寿司のようである。だが、誰かが手に取るまで回り続ける寿司とは違うのは、ゴミが一直線に母なる海へと流れて行って、我々の目の前から消えていってしまうところである。そして見えないところで、賽の河原のごとく、わずかな人々がゴミ拾いに汗を流している。このままでは海岸から永久にゴミが消えることは無いだろう。下流の人が上流の人を非難するのを聞いたことはないけれど、お互い協力すればナトリ市としての一体感が生まれ、もっと仲良くなれるのになぁ。

 そして流れ着いたゴミを見ながら今日も思ふのである。要らなくなったものが全てゴミだとするならば、我が輩も生ゴミのひとつに過ぎないのでは、と。

※ 県「動物愛護」センターで1年間に殺処分されたペットの数は、犬1,628頭、猫5,689匹(平成14年度調べ)である。その数は年毎に増えているという。

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