2008年4月29日火曜日

映画とソロツーリング

 春の陽気に誘われて、久しぶりにヤマハSRX-4で出かけました。

 室内でアイディアをひねり出すような日々が続いていて、気がつけば季節はすっかり初夏の風情。木々の若葉のライムグリーンや、山吹のクロムイエローが目にまぶしく、山々を縫って走れば、湿った土や植物の仄かな香りが鼻をくすぐります。バイクならではの恩恵です。

 目的地は丸森町筆甫(ひっぽ)で行われる上映会。知人より案内を頂いていた日本人の監督によるチベット関連のドキュメンタリー「モゥモ・チェンガ」という作品です。しかし快調に飛ばしすぎて思わず道を間違い、結局ギリギリセーフ。会場である旧中学校体育館は既に満員。最近のニュースも手伝って相当な関心の高さが伺えました。

 1時間40分の映画を見終えたところで、余韻が冷め止まぬまま会場を後にしました。後援会やもう一つ上映があったのですが、今回は涙を飲んで再びバイクで走り出しました。今回もう一つの目的は、家族が企画するポスター撮影のロケハンも兼ねていたのです。明るいうちに移動せねばなりません。
 そのまま県境の「松阪峠」を越え福島県梁川町に。峠は霊山が近いので、景色も絶景。対向車も無く快調に山を駆け降りて、遅い昼食は「伊達鶏」のからあげです。揚げたてはジューシーでとっても柔らか。値段も安くて満足です。
 帰りは阿武隈川沿いの渓谷を下って走りました。夕日を背中に浴びて、深い谷が創る陰影のコントラストの美しさ、対照的に悠々と流れる川の沈黙。その雄大さが日々細々と積もる生活のストレスを浄化してくれました。

 これから出産・育児を控えていて難しいですが、次回はもっと時間をとって出かけたいなぁ・・・。

2008年4月27日日曜日

笑う家


 今日の午後、設計させて頂いた住宅に見学希望のご夫婦を案内しました。

 実際建てたり住んだりしてみての色々貴重な体験談や、家作りにまつわる率直な感想や育児などの話題で盛り上がりました。僕に依頼される方はなぜか人が集まるような家を好まれる(あるいは好きになってしまう)方が多いような気がします。色々な理由や事情にもよるのですが、人が通うことで、おもてなしの心遣いから彩りと快いハリが生活に生まれます。結果として健全で居心地の良い場所が生まれ、建物も長く愛される。
 これは建築士としても理想でもあり、無情の喜びでもあるのです。これを言葉に上手くまとめたいと以前から思うのですが、適した言葉がなかなか見つかりません。
 ところが今日の帰り道にふっとフロントガラスの向こうに思い浮かんだのが、
「家が笑う」
という言葉でした。

 何やら大事なエッセンスが含まれていそうなので、しばし熟考の上アップしたいと思います。

2008年4月25日金曜日

古きモノとの別れ

 この一週間に色々なものとの別れがありました。大切な友人や、愛用のデジカメや、携帯などが次々と・・・。

 その中のひとつはヤマハのセローという、20歳の時に初めて買ったバイクでした。

以来どこに行くにも一緒で、山から海から、夏の京都から雪の飛騨高山まで。帰省の度に片道600キロ以上なんて当たり前に酷使しても故障ひとつしない素晴らしいバイクでした。メカを学び、悲喜こもごもの二十代を共に過ごしてきた相棒でした・・・。コイツでユーラシア大陸横断を、と腕のいい鉄工所に頼んで大改造。結局使わずじまいでしたがいつかは、いつかは、と引越しの度に一緒に運んでいました。
 それがつい先日仲間の宴席で「譲ってくれ!」と頼まれ、戸惑いはありつつもバイクは乗ってこそ活きるものと承諾しました。搬送の当日、やはり淋しい気持ちがあふれてきます。まるで長年連れ添った愛馬が異人に売り飛ばされるような気持ちで見送りました。
 その後すぐに色々な人々の手でエンジンが掛るまでになったそうです。一生懸命整備しているとの話を聞いて、あのまま手元にあったら飼い殺し、これで良かったのだと思います。

 きっと僕にとっては、次なるステージの幕上げ、新しい出会いが近づいている兆しなんでしょう。と、愛車にチャイルドシートを取付け終わって見上げた空から、春風に乗ってすぅーっと実感が舞い降りてきました。

2008年4月24日木曜日

造形的な地形


 1/100スケールで建築模型を製作中。
普段は平べったい板1枚で終わるところですが、この土地の地形にはかなりてこずっています。測量データをパソコンで一度3D化してから、その仮想空間の地形から等高線を割り出して1枚1枚高さごとにスチロールを切り抜きました。
ここまででおよそ1日です。
 参考に同スケールのミニカーを乗せて撮影。

2008年4月13日日曜日

ガムテープ書道


 JR駅構内の案内表示で注目される佐藤修悦氏の文字「修悦体」に感銘を受け、氏へのオマージュをこめて週末のイベント用の看板を製作しました。

 あまり詳しく研究せずに真似てみたのですが、後にYouTubeで製作風景を見ると作り方が全く違う。氏の方法は文字の構成をまるで柱や梁を架け渡すように構築してから、不要なところをカッターで削る取るもの。スピード感があり、実に建築的な手法であることがわかります。
 僕の場合は左手にガムテープ、右手にカッターで切れ目を入れながら曲げていく方法です。字画のひとつひとつがまるでゴムの塊になったような感覚が非常に面白く、「書道」として十分成り立ちます。

 実際やってみると、素材と技術に制約があることが独特の生命感を生み、説得力を持っていることがわかります。本来、独自性や個性というのはそういうものから派生するものです。

 ちなみに僕の文字のフォントは高速道路の表示に使われているものを引用しました。

2008年4月10日木曜日

自家焙煎の時間


 コーヒー豆が尽きてしまい、急きょガスコンロで100g焙煎しました。
今回の豆は初めて試すドメーヌというアフリカ・ルワンダの産。ルワンダといえば未だ悲しい事件の記憶が生々しい土地の印象です。紅茶の産地もそうですが、この手の嗜好品の産地というのは貧富の差が激しく、政情不安定な土地が多いような気がします。
 いつもは20分位の焙煎時間でしたが、15分程の中煎りに。飲んでみると、上品な酸味の味と爽やかな中に幽かに乾いた土の香りがしました。

 この破壊的に忙しいさ中で、少し現実逃避気味な行いかもしれませんが、凝り固まった頭を解きほぐす僕の大事な儀式の一つになっています。

2008年4月4日金曜日

原寸大のシュミレーション


 少し前になりますが、現在計画中の敷地で「原寸シュミレーション」を行いました。僕の事務所では初めての取り組みでしたので試行錯誤を依頼主にご理解していただいたうえで、更には一緒に仮設足場を組み立てるという実験的な作業にも快くご協力いただきました。
 基本計画での建物は2階がリビングとなる予定ですが、敷地は広瀬川の切り立った高い崖に面していて、眺望は良いことは分かっても、実際の景観や川との距離感が掴めません。大体そういう場合はカメラを長い棒の先に取り付けて、凡の高さを設定して撮影して確認していますが、依頼主の「五感を大切にする」というご性格も考慮して、やってみましょうか!となったわけです。

 当日風はまだとても冷たい日でしたが、非常に良い天気に恵まれました。足場設置の手伝いは予想以上に重労働でしたが、お昼には何とか完成。シェフ並の腕を持つ依頼主の料理も出てまるでピクニック気分で楽しい一時でした。
 さて足場に上っての効果はどうだったかというと、予想もつかない
別世界が広がっていました。足場は2階リビングの角を想定して設置しましたが、季節や時間で表情を変える川面や、木々の梢の近さ、そして家々の向こうに眺望が利くことが分かりました。

建築家がいくら模型や3Dから創造力を駆使しても、本物の風景や風の強弱、木々の表情までは読み取れません。その後、尊敬する建築家の吉村順三氏の対談集を読んで、氏も敷地を観察する為に専用のヤグラを持っていて構想を練っていたことを知りました。土地に合ったスケール感を生み出す為にはとても有効な手法だと確信しています。

 近所の方々も突然足場が組み上げられて驚いていた様子でした。「もう工事が始まるの?」と聞かれましたが、確かにある意味でこの土地に住むんだ、という意識を高めるためにも上棟式に似た高揚感は生まれたかもしれません。
 せっかく建てた足場ですが、事故が発生しないように夕方には解体してしまいました。今後はもっと手軽に3mの高さに上れるような足場が欲しいですね。設計して作ってしまおうかな。