2008年4月4日金曜日

原寸大のシュミレーション


 少し前になりますが、現在計画中の敷地で「原寸シュミレーション」を行いました。僕の事務所では初めての取り組みでしたので試行錯誤を依頼主にご理解していただいたうえで、更には一緒に仮設足場を組み立てるという実験的な作業にも快くご協力いただきました。
 基本計画での建物は2階がリビングとなる予定ですが、敷地は広瀬川の切り立った高い崖に面していて、眺望は良いことは分かっても、実際の景観や川との距離感が掴めません。大体そういう場合はカメラを長い棒の先に取り付けて、凡の高さを設定して撮影して確認していますが、依頼主の「五感を大切にする」というご性格も考慮して、やってみましょうか!となったわけです。

 当日風はまだとても冷たい日でしたが、非常に良い天気に恵まれました。足場設置の手伝いは予想以上に重労働でしたが、お昼には何とか完成。シェフ並の腕を持つ依頼主の料理も出てまるでピクニック気分で楽しい一時でした。
 さて足場に上っての効果はどうだったかというと、予想もつかない
別世界が広がっていました。足場は2階リビングの角を想定して設置しましたが、季節や時間で表情を変える川面や、木々の梢の近さ、そして家々の向こうに眺望が利くことが分かりました。

建築家がいくら模型や3Dから創造力を駆使しても、本物の風景や風の強弱、木々の表情までは読み取れません。その後、尊敬する建築家の吉村順三氏の対談集を読んで、氏も敷地を観察する為に専用のヤグラを持っていて構想を練っていたことを知りました。土地に合ったスケール感を生み出す為にはとても有効な手法だと確信しています。

 近所の方々も突然足場が組み上げられて驚いていた様子でした。「もう工事が始まるの?」と聞かれましたが、確かにある意味でこの土地に住むんだ、という意識を高めるためにも上棟式に似た高揚感は生まれたかもしれません。
 せっかく建てた足場ですが、事故が発生しないように夕方には解体してしまいました。今後はもっと手軽に3mの高さに上れるような足場が欲しいですね。設計して作ってしまおうかな。

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